浦和レッズ セカンドステージ優勝決定の日


 20日はいつもより早く家を出た。そのせいで、浦和駅から駒場まで初めてゆっくり歩いた。いつもは、せかせか歩くためか、試合日にレッズの旗を掲げているのを1軒しか気付いていなかったが、今日は3軒、気が付いた。
 歩道橋の手前で、レプリカを着た4,5人が道端に座って「チケットを譲ってください」と書いたダンボールを持って座っていた。そのそばに「チケット無いか、チケット買うよ」と連呼するダフ屋が1名。歩道橋を降りたところにダフ屋3名。その脇に、「チケット譲って」と書いたダンボールを持った私服の若者1名がレプリカのカップルと立ち話している。その気配をうかがうダフ屋。出島の裏には、ダフ屋の死角で「チケット譲ります」のダンボールを目立たぬようにしゃがんで示すレプリカ姿が1名。
 出島の脇では、太鼓を抱えた人を含むレプリカ姿の集団。
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 場内の指定席に向かうと、皆さん、いつもより早い出足。私が遅かったと言うべき。イスの上には30枚ほどの紙ふぶきと紙テープ。ああ、やはり足りなかったのか、と思いつつ、隣の人に、私は持って来ましたから、と渡そうとすると、私達も持ってきましたから、とのこと。気が付くと、紙ふぶき入りコンビニ袋を持っている人がそこかしこに。
 バックスタンドでは開始40分くらい前まで、紙ふぶき入りコンビニ袋の搬入作業。バケツリレーのように運び、席に並べている。
 30分くらい前に、ヴィジュアルサポの人が説明に来る。音楽が流れているため。10〜20席程度ずつ手をメガホンにして説明してくれる。「紙ふぶきはデカ旗が降りたときに撒いてください。紙テープは試合に勝ったとき、終了のホイッスルとともに投げてください。ゲーム開始時には投げないでください。万が一のときは、場内アナウンスで浅井さんの声で「優勝が決定しました」とあったら、そのときに投げてください。投げるときには、芯を外してください」。聞いた人は、感謝の拍手。たしかに、この準備は容易ではなかったはず。
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 試合開始前、黒のデカ旗がバックスタンドに降りる。おい、早いじゃないか、と思ったが、違った。「降りたとき」と思ったのは「落ちたとき」の聞き違い。
 「落ちたとき」はすごかった。視界は紙ふぶきだらけ。さらに、落ちた紙ふぶきが分厚いため、すぐにつかんで投げ上げることができる。かなり年配の方まで一心に拾っては投げ上げる。結構楽しかった。
 考えてみたら、紙ふぶきのためのような天気だった。晴れていて舞い落ちるが、風が無くピッチまで行くことはない。いろいろなことを体験させてくれた駒場が用意してくれたとしか思えない。
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 試合が終わろうとするとき、携帯を見ていた隣の人が紙テープを取り出し、芯を抜いている。思わず、「ガンバ負けましたか」と聞くと、うなずいて「優勝です」。あわてて紙テープを取り出す。芯を抜いて身構える。浅井さんの声で、「ただいま、御覧頂きましたように、本日の試合は、1対2で名古屋グランパスエイトの勝ちとなりました」と普通の調子。その後で、明るい声で、「ここで万博競技場の試合結果をお伝えします」。周囲の人は、「おおっ」という感じで身構える。「ガンバ大阪対横浜Fマリノスの試合は、0対2で横浜Fマリノスの勝ちとなりました」。ここで、紙テープを準備できていなかった人は手近の紙ふぶきを撒き始める。あせって紙テープを投げるが、紙ふぶきに撃墜される。あとで、ビデオを見ても、紙テープは目立っていなかった。残念。浅井さんは、紙ふぶきにかぶさるような「これで、我等が浦和レッドダイアモンズはセカンドステージ優勝となりました。おめでとうございます」のアナウンス。そのあと、しばらくは紙ふぶきを拾っては投げ上げる繰り返し。あぁ、楽しかった。
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 集合写真でサントリーチャンピオンシップ挑戦権ボードの後ろ中央に陣取るアルパイ。チーム全員の集合写真のときに、息子が来ているのを見つけ、手招きするが、来ないので、直ちにボードを越えてサイドラインまで来て、息子二人とゲルトの子供を連れて行き、ボードの前に座らせる。スタッフがそれは(多分、サントリーが写らなくなるので)まずいと注意すると、すぐ子供に注意して、ボードの脇に座らせる。
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 場内一周。最終戦と同様にスタッフも。メインのアウェイ側にも来てくれた。もっともピッチの中だったけど。岡野ともう一人、スタンドの下まで来ていた。西側コーナーへ行くときには、山瀬の歌。続いて、バックメインに行くときには坪井コールも。たしかにそうだ。クルヴァは分かっている。
 続いて、東側にカップは向かう。事前の報道では、クラブは、サポーターと挨拶する選手の間を警備員でさえぎるようなことはしない、として通常の警備体制にするとのことだった。そして、サイトでは、グラウンドへ降りないようにとお願いしていた。東側最前列を見ると、冷静な顔をした男達がぎっしりと固めている。半身になって手すりに座っている。ときどき、不埒な動きが無いことを確認するかのように、後ろのスタンドに眼をやっている。
 チームはまず、ピッチに整列して一礼の挨拶。いつもどおり応えるクルヴァ。まさかピッチからの挨拶だけじゃないよね、と思って見ていると、カップがクルヴァに近付いていく。そして、なんと最前列のサポに渡される。オーロラピジョンには渡されたカップを高々と掲げるサポと周囲のサポの笑顔が映し出される。こんなことは、これまであっただろうか。これこそ、レッズだと思い、うれしくなる。翌日のスポーツには1面にこのときの写真を扱っているものもあった。デスクが分かっている新聞だ。
 最前列でカップを掲げていたサポが、戻そうとしたのか、バランスを崩したのか、カップの下を持ったままグラウンド側へ倒してしまう。その一瞬、表彰を受けたカップを、その場で壊してしまったチームのことが思い出され、悪い予感と諦めの感情が交錯するが、杞憂に終わった。カップは立て直され、周囲のサポが触れたあと、普通に戻された。
 クルヴァ前を去り、メインへ向かうチーム。アルパイはクルヴァに近付き、ユニの上に着ていたもの(記念Tシャツ?)をクルヴァに投げ入れる。いい奴。
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 メインへ向かうチームに東側離れから紙ふぶき。試合後の挨拶では、いつも、メイン・アウェイ側と同じように素通りされるので、素通りされると思ったのだろう。しかし、きちんと一礼の御挨拶。あわてて再度の紙ふぶき。
 メインホーム側へ来る。紙ふぶき。しかし、今日は、メイン中央まで進んで、ここで一礼の御挨拶。紙ふぶき。
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 胴上げなどがオーロラビジョンで映し出される。なんとなく実感が湧かない。選手が、クルヴァへ再び向かう中、内舘が西側コーナーへ走っていく。さすが、分かっている。駒場の雰囲気を作っているのは、いつも的確に東側に合わせる西側のコールでもある。そこへユニを投げ入れる。続いて、三都主も西側へ向かう。三都主は西側にユニなどを投げ入れた後、靴を2階席に投げ上げて拍手を浴びる。
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 周囲の人もかみしめるように立って見ていた。突然、クルヴァで起こる「ゲットゴール FUKUDA」のコール。不意を衝かれて驚く。不思議に思ったら、なんと、オーロラビジョンに福田の姿。照れたように笑っている。周囲もコールする。手を小さく振って応える福田を見ながらコールしていたら、ちょっと涙腺が緩んだ。福田引退試合でも感じなかった感覚。これが優勝の実感か。
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 後片付けは早かった。ほとんどの人が自分の周囲の紙ふぶきを片付けている。ホーキを持っている人も20人に一人くらいいたのではないか。さらには、私は軍手で代用したちりとり持参の人もいる。
 2、3人の若者が手すりに寄り掛かってぼんやりとピッチを見ていた。そこの足元だけに紙ふぶきが残っているのにも気付いていなかった。片付けようとした近くの人が声を掛けたら立ち去った。
 興奮状態だけを望んで来た臨時参戦者には、この日はつまらなかったかもしれない。
 このとき、ナビスコカップ決勝でシーズンチケットホルダーに自由席を優先販売した趣旨を理解した気になった。要するに、興奮状態に浸るために来る臨時参戦者をできるだけ排除したいのだ。おそらくは興奮の記念にゼリッチのメダルを持ち去ったであろう臨時参戦者を。
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 ピッチの中は掃除できないよなあ、と思いつつ、スタジアムを後にした。翌日知った話では、あの後、場内放送によって、ピッチの中も掃除できたとのこと。読みが甘かった。
 帰路、産業道路に止まっているバスが、ワイパーに付けたレッズの旗を振っているのを見た。赤一色で、スタッフ用のバスだろう。行き先表示には、左側に「12.11」が流れて表示され、中央に「V1」が点滅で表示される。第2戦が12日と思っていた私は、そのときには何のことか分からなかった。産業道路を渡った風呂屋の隣の角では、「祝 レッズ優勝」の横断幕を掲げて、振る舞い酒。「中越地震義援金」の募金箱を持っていた。一杯頂いたが美味しかった。有り難うございます。さすがに、昨年のナビ優勝の駒場報告会の帰路では、これはなかった。浦和駅までの途中の八百屋に目をやったら、「レッズ優勝セール」の小さな即席の札が店頭にあった。さすがに、これもなかった。
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 浦和駅に着き、西側に渡ろうとしたら、真新しいビルに「鳥昇」のカンバン。入ったら、赤い人でいっぱい。カウンターで飲んでいたら、次から次へと赤い人が現れるが、7時の予約が入っているから6時半までに席を空けてくれと言われて立ち去る。入ったのは、了承した家族連れだけ。そのとき17時半。みな、遅くまで飲むつもりなんだろう。
 「鳥昇」で建て替え前に飲んだのは、J2に落ちたとき。あのときとは、酒の美味しさがぜんぜん違う。というか最近、調子が悪くて酒を手控えていたのが嘘のように美味しい。
 地下通路をくぐり、ポイントを観に行く。反対側から赤い人が次々と来てすれ違う。ポイントの前ではまったりとした雰囲気が流れていた。まだ、本隊は到着していない模様。続いて「力」を目指す。案の定、すごい人だかり。やっとのことで抜ける。イトーヨーカドー前では「明日から優勝記念セールです」と言ってチラシを配っていた。
 半兵衛でもカウンターに座ることができた。ここも中は赤い人だらけ。昨年のナビ決勝のときも覗いたが、そのときはカウンターにスーツ姿もいたような気がする。この日は赤い人だらけ。昨年は、ここで飲んでいるときにオフト解任のニュースを見てびっくりしたが、この日の18時半のニュースはレッズ優勝。店内から拍手が起きる。
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 酔っ払ってきたので、帰宅しようと駅に向かう。伊勢丹を抜ける通路で思い出す。昨年のナビのときは、ここで太鼓を叩いてコールして更新する20人くらいの一団とすれ違ったんだ。あのときは、もう真っ暗だったような気がする。
 抜けて駅を目指すと、選手の集合写真の前で人だかり。何事かと思ったら、小ぶりのクス球から下がった「2nd 浦和レッズ優勝おめでとう」の脇に立って記念写真をかわるがわる撮っている。そこから遠慮するように離れて立っている伊勢丹のバッジをつけたスーツ姿。酔いを醒ましながら見ていると、通行人にやたらに赤い人が多い。もちろん、駅のそばでスーツ姿も通るが、半数以上は、連れの中に赤い人がいる。子供だけレプリカを来た家族連れや、赤いマフラーを巻いた女性と手を組んで歩く男性も含めれば、半数以上は確実に赤い人。これは駒場の2万人や埼スタの6千人だけではないのだろう。家でテレビを観ていた人も赤い人になって家から出て来たのではないか。この予想は、後でホームで北から来る電車から降りる赤い人を見て確信に変わる。おそらく、浦和で一緒に飲もうと友人から呼び出されたのだろう。
 ぼんやりしていたら、伊勢丹入り口の前の歩道の広場側に荷物が届けられ、号外が配られ始める。その場にいた人だけでははけずに、配りに行く。
 集合写真の前を済まなそうに腰をかがめて走り抜ける人や平然と自転車をこいでいく人、いろいろな人がいるなぁ、とぼんやり見ていたら、遠くから、太鼓の音とコールの声。コールの声量が昨年とはぜんぜん違う。期待して待っていたら、線路沿いの道から登場したのは大勢の赤い人。おそらく3百人程度はいたのではないか。2,3人は発炎筒まで掲げ持っている。爆竹がなる。集団はコールしながら駅前へ。コールリーダーや太鼓など10人程度が地下通路入り口の上によじ登り、しばらくコールする。しかし、2,3分で降り、力を目指す。駅沿いの道路には警察の指揮車が停まり、道路には下りないでください、と呼び掛けていた。
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 帰宅してテレビを観た。レッズの選手が優勝チームとして居並んで生出演しているのを見て、ああ、優勝なんだ、と実感した。

                      おしまい
〔2004/11/21UP〕


 ちなみに、この日の紙ふぶきは、「中坊コラム」の「2004年 賞づくし」で、「最も感動した賞  駒場紙ふぶき」として取り上げられた。その説明から抜粋。
駒場スタジアムを覆いつくす大量の白い紙ふぶき。
スタジアム全面が完全なる劇場となった瞬間。

すげぇ・・・・・・・。
スタジアム全体から紙ふぶきがまかれ、上空のヘリからの映像では
駒場が真っ白になっていた。
何度見てもこれは鳥肌たちますわ・・・・・・。
〔2005/4/13UP〕


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